やむを得ない事情で収入がなくなり、貯金もなく、援助してくれる家族や親族がいなくて生活に支障が出てしまった場合、国が補助してくれる制度が「生活保護」です。
なかなか景気が良くならない昨今、生活保護の受給世帯は増え続けています。
しかし、生活保護を受けると、保険に加入できなくなる、加入している保険は解約しなければならないという条件があります。
では、同じ保険の仲間である「学資保険」の加入があった場合、どうなるのでしょうか。
子供の将来の為に加入している「学資保険」についても、同じ条件が適用されて解約しなければならず、継続が出来なくなるのでしょうか。
今回は、その「生活保護状況での学資保険の扱い」について、詳しく解説していきます。
もくじ
「生活保護」ってどんなもの?受けるにはどんな規則があるの?
まず最初に、生活保護について、簡単に説明します。
生活保護は、国が行うもので、その費用は税金から捻出されます。本来、病気やけがなどで仕事が出来なくなり、職を失って収入がなくなるだけでなく、家族の援助も見込めず、換金できるような資産もないという状況であり、本当に生活に困った人のみが受け取るべき性質のものです。
そのため、受給するには様々な条件があります。
生活保護は4つの原理によって成り立っている
生活保護は、4つの基本原理によって成り立っています。
簡潔にまとめると、
- 「国家責任の原理=国が最低限度の生活の保障をする」
- 「無差別平等の原理=法が定めた条件を満たしていれば、国籍や理由にかかわらず、国民のだれもが無差別平等に保護を受けることが出来る」
- 「最低生活の原理=健康で文化的な最低限の生活の保障」
- 「保護の補足性の原理=利用できるような資産が何もなくなった場合保護が行われる」
ことを指します。
生活保護を受けられるのは、資産を持っていない人
この、上記4つのうち、最も重要なものが「補足性の原理」です。「補足性の原理」は、「保護は、生活に困窮するものが、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活維持のために活用することを要件として行われる。」(生活保護法4条1項)という規定です。
かみ砕いて簡単にまとめると、「生活保護を受けるにあたっては、資産を持っていてはいけない」ということが書かれています。
お金になるものが何もない状態だから、「生活保護」という形で、国からの援助を受けることが許可されることになるのです。
言い換えると、換金できる資産を持っていたのでは「生活保護」を受けることができる資格から外れてしまうのです。
次の章では、生活保護を受けるにあたって、どのようなものが資産と見なされるのかについて、書いていきます。
生活保護を受ける場合、「学資保険」は継続できない?
生活保護を受給する場合、現在所持している資産があるかどうか、すべて調査されたうえで問題がなければ「生活保護の受給資格に該当する」という許可がおります。
しかし、調査の結果、一定以上の資産が認められた場合、支給の対象とはなりません。
次の項で、この資産に当たるものについて、詳しく書いていきます。
生活保護制度で「資産」と見なされるもの
生活保護制度において、資産とされているものは、以下のようになります。
- 不動産(生活保護受給を申請する人名義の土地など)
- 現金
- 預貯金
- 株・小切手などの有価証券類
- 保険
- 車・バイク
- 宝石や金・プラチナなどの貴金属
- 負債(借金)
「上記のような資産が一切ない」ということが証明されないと、生活保護の受給は認められません。
生命保険をはじめとする各種保険も資産と見なされますので、基本的には解約しなくてはいけません。
「学資保険」も例外ではない
この規定に従えば、「学資保険」も例外ではありません。
生命保険の一つと見なされているので、基本的には解約しなくてはいけなくなります。
特に、学資保険は、進学時の費用を補填するために契約するもので、貯蓄型の保険ですから、契約して間もないものでなければ、一定金額の解約返戻金が発生するためです。
しかし、「学資保険」に限ってですが、保険契約の内容が一定の条件を満たしていれば、解約せずに契約の継続が認められる場合があります。
生活保護を受けていても、「学資保険」を解約しなくていい場合もある
生活保護を需給する場合、資産を処分しなくてはならないのが原則であるということは、この章の第1項で書きました。
同じく、学資保険も資産と見なされるので、生活保護を受けるのであれば、解約しなくてはいけないことについては、第2項で書きました。
しかし、条件付きではありますが、「学資保険を解約しなくてもいい」という例外もあります。
以下の3つの条件を満たしている条件の契約なら、学資保険は解約せずに継続が可能であることを、厚生省が認めています。
- 満期保険金の受取時期が15歳満期又は18歳満期の学資保険であること
- 同じ世帯で生活している子供の就学(進学)時に、必要とする費用のための保険契約であること
- 生活保護を開始する時点での解約返戻金の金額が50万円以下であること
3つを簡単にまとめると、
- 「15歳もしくは18歳満期の学資保険」
- 「一緒に生活している子供の進学時の費用に使うもの」
- 「解約返戻金が50万円以下」
ということです。
この条件を満たした契約の学資保険であれば、解約しなくてもすみます。
生活保護を受け始めてからも、支給される保護費から保険料を支払って、保険契約を継続することができるのです。
このように、「学資保険」であれば、生活保護を受ける必要に迫られても、条件付きですが、継続が可能な場合があるのです。
ですから、あわてて解約に踏み切るのではなく、まず契約している学資保険をよく確認してみることが大切です。
生活保護受給中の「学資保険」、満期が来たら保険金は受け取れるの?
前章で、生活保護受給中であっても、「学資保険」の契約であれば、契約の継続が認められる場合もあると書きました。
しかし、満期保険金についてはどうなのでしょうか。受け取ることは可能なのでしょうか。
もしかしたら、「学資保険」の契約の継続は認められたけど、生活保護費として支給されるお金を積み立てて満期を迎えることになるので、満期保険金は受け取れないのでは?と、考えたかもしれません。
しかし、「学資保険」の満期保険金は、進学時の費用を補填するために積み立てるものです。
そのため、満期保険金の使用目的が、大学や専門学校の入学金など、「学資保険」の本来の目的から外れないものであり、なおかつ生活保護の目的から外れていないと判断される場合、収入扱いにはなりません。
ですから、満期保険金を受け取っても、本来の目的である「学費」の為に使うのであれば問題にならず、生活保護費を減額される理由にはなりませんから、大丈夫です。
生活保護下での「学資保険」の継続は、条件があることをお忘れなく
ここまで、生活保護の受給を受けることになった場合でも、学資保険の継続が認められる例もあることを説明してきました。
しかし、これはあくまでも、一部の契約においてのことです。すべての「学資保険」契約に共通することではありません。
現在、契約している「学資保険」が、生活保護を受けても継続できるかどうかは、その内容が、「生活保護下でも、積み立てを継続していいと認められるもの」かどうか、提示された条件に合致していなくてはなりません。
もし、条件を満たしたものでなかったときには、生活保護を申請した段階で、解約しなければいけないというのが原則です。
繰り返しになりますが、「学資保険」だから、「どんな契約条件であっても継続できるということではありません」ので、この点については、よく理解しておくことが大切です。
生活保護受給中には、新たな保険の契約はできない
それから、もう一つ付け加えておきたいのは、生活保護を受給している期間は、新しく保険を契約することは出来ないということです。
生活保護受給以前に加入していた「学資保険」であれば、条件付きで継続が認められていますが、基本的に生活保護受給中は、新規に保険の加入はできません。
この点は注意が必要ですから、よく覚えておいてください。
「生活保護」と「学資保険」一人で考えず、専門機関に相談しましょう
ここまで、生活保護を受給しようとした場合の「学資保険」の扱いについて書いてきました。
冒頭で書いたように、生活保護を受給する場合、資産になる保険は処分しなければなりません。特に、「学資保険」は貯蓄性が高く、換金が出来るので、生活保護を利用するならば、基本的に解約しなければなりません。
しかし、「学資保険」は本来、大切な子供の未来の為に積み立てている物です。
ですから、これまで書いてきたように、厚生省の提示している条件を満たしている契約であれば、「学資保険」を継続していくことが認められていますし、生活保護費の中から保険料を支払うこともできます。
満期保険金も、学費目的以外に使うのでなければ、受け取ることも出来ます。
一番大切なことは、現状をきちんと把握したうえで相談し、最良と考えられる方法をとっていくことです。
自分一人の考えで決めてしまわず、分からないことは問い合わせ、必要なことは相談したり調べたりし、最も良い決断が出来るようにしていくことが大切です。
まとめ
生活保護の申請が受理され、実際に受給を受け始めて、生活状況が一段落し落ち着いたら、考えていただきたいことがあります。
それは、いつまで生活保護を受けるのかということです。
もともと、生活保護は「働きたくても働けない人」のためのものです。
ですから、働けなくなった理由が解消されて、新たに仕事を再開し、安定収入が見込めるようになったら、速やかに解除を申しでなくてはなりません。
他の人が、毎日一生懸命働いた賃金から支払った税金が「生活保護費」のもとになっていることをきちんと理解して、必要以上に頼らないことが大切です。
病気やケガが原因ならば、焦って無理をするのはいけません。
しかし、体が回復してきて、社会復帰が見込めるようになったら、徐々に「いつまでに仕事を再開するか」を考えるようにし、「生活保護」からの離脱を考えていきましょう。
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